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人工授精について

 人工授精(IUIまたはAIH)は受精の場である卵管の端膨に受精に必要十分な精子を届けるために、子宮腔内に精子を注入する治療法です。精液が正常の状態でもタイミング法では、この部分にたどり着く精子の数は100個程度だと考えられ、人工授精はその数を増やすことができます。

 人工授精が行われる主な理由は、乏精子症(精子濃度1,500万/ml以下)、精子無力症(運動率40%以下)、性交障害、精子頸管粘液不適合(フーナーテスト不良)、抗精子抗体保有症例、原因不明不妊症例(精子が正常でも適切なタイミング法で妊娠できない)、等です。

           

 精液を直接注入すると感染や精漿中に含まれる成分により子宮のけいれんを起こし痛みを生じる可能性があるため、普通は精液を洗浄して不純物を除去し、運動良好精子を濃縮し、0.2-0.5ml程度注入します。当院では、できるだけ精子にストレスを加えず丁寧に調整します。痛みはなく、麻酔は不要です。

 人工授精に用いる精子は、当日に採取(ご自宅で採取されお持ち込み、又は医院で採取)された新鮮な場合と、事前に調整し凍結保存した場合があります。ご主人のご都合で当日採取が困難な場合、遠隔地におられる場合に後者がよく使われます。

 人工授精は実施のタイミングを排卵日にできるだけ一致させることが重要で、基礎体温、頸管粘液性状、超音波による卵胞径計測、尿中LH(尿排卵日検査薬)などを参考に排卵日を推定し実施します。

人工授精に適した排卵日の求め方は、タイミング療法のページをご覧下さい。人工授精を行う時期は、基本的にタイミング療法と同じです(便宜上、実施の日を無理でなければ指定することも可能です)

 実際には尿中LHサージ陽性日の翌日、またはその直前日に実施します。自然排卵が始まらない場合は、人工授精の前日か当日にhCGという注射で排卵を人工的に起こすことも可能です。

 精子の準備には通常30分〜1時間を要します。特別な混雑が無い限り、精子のお持ち込みから約1時間半程度で人工授精が完了し、ご帰宅いただけます。当日はあらゆる業務、家事が可能です。通常、人工授精の前後にタイミング法をお持ちいただくことは可能であり、お勧めいたします。

 人工授精の妊娠率には、①奥様の年齢、②精液所見、③排卵の方法、が影響します。

 ①女性の年齢が高くなるほど人工授精の妊娠率は低くなります。下のグラフは、「累積妊娠率」といって、何回までの治療で何%の女性が妊娠しているか、を示します。年齢が高くなるほど成功率は低くなる傾向があり、妊娠率が増えなくなる回数が少なくなります。

 人工授精の1回あたりの妊娠率は通常一桁%でしかありません。女性の年齢にもよりますが、一般的には人工授精は合計3回から6回程度行うことが勧められます。それにより、30歳代後半の女性では、約3割の女性が妊娠され、1回の体外受精と同等の治療効果があると考えられています。

 人工授精を受ける回数の上限は決まっていませんが、最大6-7回程度と一般的には考えられています。治療は毎月連続で行う必要はなく、時にお休みを取りながらお続けいただきたいと思います。

 ②調整後の総運動精子数が少なくなるほど人工授精で妊娠する効率は低下し、100から500万がAIHの限界とされており、この場合は顕微授精の適応となります。

 時に100万を下回る総運動精子数の人工授精でも妊娠される方がありますが、その数が低いほど毎回の妊娠率および妊娠率の増加が頭打ちになる治療回数が早くなります。当院では、極めて精子数が少ない(または無精子に近い)場合を除き、人工授精をキャンセルすることはありません。

 ③自然周期で行う場合のほか、クロミフェンやゴナドトロピンによる排卵誘発と併用する場合があります。原因不明不妊の周期毎の妊娠率は、自然排卵に比べ排卵誘発を併用した方が高く、とくにゴナドトロピンを併用した場合が最も妊娠率が高いとされています。

 但し、排卵誘発を併用する場合は多胎妊娠(内服では双胎が、ゴナドトロピン連続使用ではより高度の多胎妊娠が起こりやすくなります)や卵巣過剰刺激症候群がおこりやすくなります。

 当院では最初の数回は、自然排卵による人工授精の実施をお勧めし、それ以上の回数が必要となる場合に、慎重に内服による排卵促進をお勧めする場合があります(患者様との相談にて判断)。ゴナドトロピン注射単独による排卵誘発は、例外的な場合を除いて、ほとんど行いません。

 人工授精の実施(精子調整および子宮内への注入手技)は、保険適応外となります。料金については変動あり、医院にてお伝えいたします。

 人工授精についての解説動画はこちら(2014年作成版にて現在の方法および料金が異なります)

(文責:生殖医療専門医 朝倉寛之)

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