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排卵日検査とタイミング治療について

排卵予測と排卵日検査薬の使い方について

 本稿では、排卵日検査薬の使い方について、タイミング療法について説明します。これはあらゆる当院における不妊症治療の基本的な検査となります。以下、やや詳しい内容となりますが、是非ご確認をお願いします。

タイミング治療を理解することは、人工授精に進む際の準備となりますので、十分に基本を習得してください。

 多くの妊活ご夫婦が希望する「タイミング法」とは、つまるところ妊娠し易い時期である排卵のタイミングを知ることにほかなりません。 実は、この排卵日は、そのヒトにより異なり、同じヒトでも毎月変動が起こります。身体と精神状態、業務や日常生活等に影響されやすいイベントです。

 といっても排卵の日でしか妊娠しない(しにくい)と誤解される方々が多くおられます。過去の科学的研究から、人間が妊娠できるのは、排卵が起こる前の3〜5日前の間であることが判っています。特に次に説明する排卵の前兆であるLHサージが見られる前後が最も妊娠し易いと考えられています。

 但し、変動しやすいこの排卵日を特定するのは、思ったよりも難しいのです。

  • 排卵日検査とは?

 女性が排卵する36〜48時間前に、脳下垂体という脳の下にぶら下がる部分から卵巣に向かって、約1日間だけ排卵を指示するLHホルモン(黄体形成ホルモン)が大量に分泌されます。これをLHサージといいます。

 かつては血液検査でしか分からなかったLHサージが、排卵日検査薬で尿を用いて見つけることができるようになりました。

 卵管の中で精子が卵子と出会ってはじめて受精が成立します。これは非常に簡単なことのようですが、排卵された卵子の寿命は排卵後約24時間、卵管の中での精子の寿命は約72時間であることより、月経周期の中でも、妊娠する可能性の高い日は数日間です。

その中でLHサージからの約2日間以内が妊娠する可能性の最も高い時期にあたります。検査が陽性の日だけが妊娠できるチャンスではない(その日に排卵することはまれです)事を覚えておきましょう。検査が陽性の前日や翌日も充分に妊娠できる可能性があります。

 排卵日検査が陽性となって、排卵後に増えてくる黄体ホルモンによって体温が上昇するまでには、1〜3日かかることが普通です。LHサージを見つけることが、最も正確な排卵の開始を予測できる方法と認められています。

 排卵現象の順序は:水様帯下の増加 >> 卵胞の発育(18-20ミリ大) >> LHサージ(排卵日検査陽性)>> 排卵 >>体温の上昇、となります。 

 「排卵日予測アプリ」について:

 スマートフォン等の普及で、基礎体温表の変わりに各種の「排卵日予測アプリ」を利用される方も増えています。これらは、毎月の月経開始日を記録することで、月経周期を計算し、次の排卵日がいつになるかを予測する「簡易な計算器」です。

 その結果は、毎月微妙に変動する実際の排卵日とは異なっていることも多いので、アプリ使用で結果が得られない場合は、排卵日検査薬への切り替えや併用をお勧めします。1-2ヶ月は、アプリと尿LH検査を併用してみてください。

  • 排卵日検査薬(キット)の種類

排卵日検査薬は健康保険で処方されるものや市販されている数種類あります。2016年9月より排卵日検査薬が医療用医薬品から一般用医薬品(第1類医薬品)にカテゴリーチェンジされ、ドラッグストアでも販売できるようになりました。 「排卵日検査薬」での検索で各製品を確認できます。

おすすめの排卵検査薬10選!分かりやすい比較表付き(日本製・海外製)

 検査の判定方法や、感度および価格はそれぞれ異なりますが、国内製のものはやや価格が高めですが使い方と判定方法がしやすく、外国製のものは長期間使う場合にはコスト面でのメリットがあります。まずは、国内製で使い方に慣れてから外国製へ切り替える、または外国製での陽性の確認に国内製も使用するなどの使い方をされている方もおられます。

  • 排卵日検査薬(キット)の使い方(以下は院内では保険診療で使えるクリアビューの場合ですが、原則は他の検査キットでも同様です)

  • 検査開始日を正確に決めることが大切です。個々の女性が排卵する特性(月経開始から排卵日までの日数)を把握する医師の指導のもと、最初に通常の月経周期に基づいて、以下の表より、検査開始日を確認して下さい。通常の月経周期が28日ならば11日目から検査を開始します。

    意識的または無意識的に検査薬を節約しようとして排卵直前まで尿検査を始めない場合、陽性を見逃す可能性があります。必ず排卵が予想される2-3日前より検査を開始し、色の変化を見るようにしてください。

    月経周期が不規則な場合には、最も短い月経周期に基づき検査開始日を決定して下さい。

  • 検査する時間帯は(薬の指示にかかわらず)、できるだけ午前10時以降、たとえばお昼休みごろから夕方をお勧めします。(朝一番や深夜の検査では正確な検査ができない、見落としがあることがあります。)また、毎日同じ時間帯に検査するようにして下さい。

  • 尿を紙コップ(コンビニ等で販売あり)に採尿し、袋より検査薬を取出し、尿に、15秒程度浸して下さい。または、尿がけ(5-10秒以上)での検査も可能ですが、当院ではより確実なコップ尿での検査をお勧めしています。検査薬の濾紙に尿がしっかり浸透したことを確認したら検査薬を紙コップより取出し、キャップをして、3分程度待ちます。

  • 3分経過すると、水色の線がスティックの矢印の上に浮き出てきます。浮き出てきたら、排卵が近いかどうかスコアをみて判定していきます。検査開始から3~10分の間に判定して下さい。なお、長い時間が経った場合、テストラインが生じる場合があります。

 基礎体温を記録されている場合、基礎体温のグラフに排卵日検査薬の結果を実施の日ごとに記録されておかれると、LHサージ陽性の日前後の体温の変化との関係が分かりやすくなります。

注意!:毎月、強い(クッキリ)陽性が判るとは限りません。薄い二本線が出た時点からタイミングを取らずにクッキリ陽性を待機している間に検査が陰性となり、排卵してしまう場合も多々あります。二本線が判れば、そろそろタイミングをお持ちください。

  • より効果的に排卵日検査を使うコツ★

    • タイミング療法は、排卵日に合わせて夫婦生活を持って頂き妊娠を試みる治療です。排卵日検査薬で、より正確に排卵日を知ることで受精の機会をつかみやすくなります。超音波検査で卵胞(卵を育てている袋)が大きくなっているか、を確認しながら排卵検査薬を使うとより効果的です。

    • 卵の育ち方もひとりひとり個性があります。月経が始まってから14日目ごろに安定して排卵する方もあれば、15~30日と時間がかかる方もあります。超音波診察で卵胞の大きさから排卵が始まる時期を予測して,検査薬を使う方が経済的でストレスも少ないかもしれません。

    • 排卵日検査薬が陽性になる日しか妊娠ができないと考えてられがちですが、陽性になれば、2日以内に排卵がおこるので、陽性の当日、または翌日に夫婦生活を取ると排卵の時期に精子が卵管に待っている状態になります。排卵の時期がずれることもあり、できれば陽性となる時期の少し前ぐらいから、1〜2日おきに夫婦生活を持っていただければ、良いと思います。
    • 排卵日検査に慣れるには、少し時間がかかります。使い方や判定方法など、ご自分にあった検査薬を選ぶことも大切です。また、感度が高い検査薬では、多嚢胞性卵巣症候群などの場合には偽陽性(本当の陽性ではないこと)となる場合があるので、使い始めの数ヶ月は、超音波による卵胞診察と合わせて使われることをお勧めします。

  • 排卵日検査薬の使い方が良く分からない場合、医師・看護師と相談、検査する時間や方法(午後やコップ尿での検査に変えてみるなど)の工夫をしてみましょう。

  • 検査の結果をスマホで写真撮影し、後日、医院で医師と結果を確認するのもお勧めです。

 当院では排卵日検査薬を使い、多くの方が自然な排卵を利用してタイミングや人工授精で妊娠を達成されておられ、喜ばしく思います。詳しい内容について相談をご希望の方はお気軽に看護師、医師にお尋ねください。

(文責:生殖医療専門医 朝倉寛之)

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