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AMH・妊娠の可能性予測

AMH(抗ミュラー管ホルモン)について

  • 血液中のAMH値は、卵巣予備能(卵巣機能)を評価する手段として注目されています。

  • AMHは、卵巣内の小さな卵子の周りにある細胞から分泌され、将来育つ卵子の数と関連するとされます。よってAMH値は卵巣内の卵子数と相関すると考えられています。

    女性においては,直径 6mm 程度までの比較的早期の胞状卵胞に存在する顆粒膜細胞によって産 生されるが,8mm を越す時期からその産生は低下するといわれています。また,血中の AMH 値の年齢推移 については,胎生期より産生が確認され,思春期に最最高濃度に達したあと加齢に伴い徐々に減少し,閉経 後には検出されなくなると報告されています。





  • AMH値は個人差が大きく加齢・喫煙・肥満・子宮内膜症・卵巣手術によって低下し、また多嚢胞卵巣症候群(PCOSでは高値を示します。

  • 喫煙によってAMHは大きく低下することが知られ、禁煙されるとある程度は回復する事がしられています。

  • AMHの数値から妊娠の可能性や、閉経する時期を予想することは困難です。但し、妊活中の女性へは、妊娠治療のステップアップをする判断や、ART(体外受精・顕微授精)における卵巣刺激方法の選択に活用する事ができます。

    体外受精で卵巣刺激を行う場合、AMH値と得られる卵子の個数は正の相関をとる傾向がありますが、採卵個数および卵子の質を正確に予測することはできません。

    但し、AMH値が高い場合、卵巣刺激により卵巣過剰刺激症候群(OHSS)が起こる可能性が高まることは知られるようになりました。その場合、事前に卵巣刺激の程度を適度にすることで、OHSSが起こる可能性を抑制できます。

  • AMHの値から、卵子の質や不妊症治療の成果を予測することはできません。年齢が高くなければ、卵子の質はAMH値よりも年齢で左右されることが一般的です。逆にAMH値が年齢に比して低い場合でも、卵子の質は良好な場合があります。

  • 検査は月経周期のいつでも血液検査で実施します。検査は健康保険の適応はされていません(2022年1月時点で)。

  • AMHの検査値は、ng/mLで表され、以前のpM(又はpMol)値は7.14で割るとng/mL値になります。

  • 国内外で血液中AMH値の年齢別標準値が求められています。下記にJISART(日本生殖補助医療標準化機構)の国内不妊症女性、および米国生殖医学会雑誌に掲載された米国の一般女性での標準値を示します。





  • 標準値を参照する場合に注意するべきことは、

    1)グラフはあくまで平均値、中央値であり、上下の細い線の範囲内(95%基準範囲内)であれば、異常値ではないこと、

    2)AMH値を他の年齢の平均、中央値と比較していわゆる「卵巣年齢」を示唆する(”あなたの卵巣年齢は、○○歳に相当”という説明)ことは誤った考え、ということです。

    AMH値の高低は、あくまで個人差(身長、体重のように)であって、他者と比較して優劣を判断するべきではありません。AMHの値が自分の年齢平均より低いことを理由に、希望しないより進んだ治療を勧められるならば、その判断は大いに疑問視すべきと思います。

  • 依然、生殖医療におけるAMH検査の意義が明確ではない中で、その検査が誤用される現状にたいして、日本産科婦人科学会は下記の声明を公表しました。AMHを検査される場合には、これらを留意して結果を判断してください。

    1.AMH は卵子の質とは関連しない。

    2. AMH の測定値は個人差が大きく,若年女性でも低い場合や高齢女性でも高い場合があり,測定値からいわゆる「卵巣年齢」の推定はできない。

    3. 測定値と妊娠する可能性とは直接的な関連はなく,測定値から「妊娠できる可能性」を判定するのは不適切と考えられる。

    4.測定値が低い場合でも「閉経が早い」という断定はできない。

    5.
    AMH の測定系に関しては製造会社の努力で改良されてきたが,測定感度,測定精度に関してはまだ改 良の余地があると考えられる。特に,低値の場合の再現性は不十分と考えられる。

    さらに,最近,日本に おいて製造承認を得た測定系が利用できるようになったが,その取り扱い,例えば測定目的,測定値の解釈などには慎重な対応が求められる。

  • ご自身のAMH検査の結果がご心配を抱かれる場合、不妊症専門の医師と相談をなさってください。結果はご年齢や診察による卵巣の状態、既往歴(子宮内膜症、抗がん治療)、生活歴(喫煙歴、肥満)、家族歴(早発閉経等)を総合的に勘案して判断されるのが望ましいです。

  • AMHは検査としてその意義が確立しているとは言えないので、その値だけを人生航路の判断に根拠にしないほうが良いと言えます。結果を知るのが不安であれば、本当に必要となるまで検査を受けない判断があっても良いでしょう。

(文責:生殖医療専門医 朝倉寛之)

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