メニュー

プレコンセプションケアとは?


プレコンセプションケア —— 妊娠する前からの体づくり

■ 妊娠は、気づいたときにはもう始まっています

赤ちゃんの脳と脊髄のもとになる「神経管」は、妊娠6週ごろには閉じてしまいます。 多くの方が妊娠に気づくのは、生理が遅れてからの4〜5週。つまり、赤ちゃんの体づくりの大切な一歩は、「妊娠したかも」と思う前に、もう始まっているのです。

しかも、妊娠の約4割は「予定していなかった妊娠」といわれます(WHO)。 「妊娠がわかってから気をつければいい」では、いちばん大切な時期を逃してしまうことがあります。

だからこそ、「プレコンセプションケア(Preconception care=妊娠前のケア)」という考え方があります。 妊娠する前から、自分の体と生活を整えておくこと。難しいことではありません。今日からできることばかりです。

■ 日本だからこそ、知ってほしいこと

赤ちゃんの神経管がうまく閉じない病気(二分脊椎など)は、妊娠前から「葉酸」というビタミンをとることで、リスクを減らせることがわかっています。 欧米ではこの対策が広まり、この病気は減りました。ところが日本では、二分脊椎の赤ちゃんは1万人に3人(1987〜91年)から5.6人(2007〜11年)へと、むしろ増えています。 理由のひとつは、「妊娠前から葉酸をとっている女性が少ない」こと。妊娠中は8割以上の方が葉酸を意識する一方、妊娠前からとっていた方は4割弱にとどまります。

これは、知ってさえいれば防げることです。当院がこのページを作った理由は、ここにあります。

■ 今日から始められる5つのこと

1.葉酸のサプリメントを、1日400μg

食事だけでは足りない分を、サプリメントで補います。目安は1日400μg(マイクログラム)。 始める時期は「妊娠を考え始めたら」。少なくとも妊娠の1か月前から、妊娠3か月まで続けます。 たくさんとれば良いわけではありません。サプリメントからは1日1,000μgを超えないようにしてください。 薬局やドラッグストアで手に入ります。「葉酸400μg」と書かれたものを選べば十分で、高価な製品である必要はありません。

2.やせすぎも、太りすぎもなく

日本の20〜30代女性の5人に1人が「やせ」(BMI 18.5未満)です。やせていると、排卵が止まったり、赤ちゃんが小さく生まれたりするリスクが上がります。 反対に太りすぎ(BMI 25以上、特に27以上)も、排卵しにくくなることがわかっています。 目安は BMI 18.5〜25。BMIは「体重(kg)÷ 身長(m)÷ 身長(m)」で計算できます。 大切なのは体重の数字より、極端なダイエットをしないこと、そして朝食を抜かないことです。

3.たばこは、ふたりでやめる

たばこは、妊娠しやすさに直接ひびきます。吸う方は妊娠までに時間がかかり、流産の危険は約2倍。体外受精でも、妊娠までに必要な回数がほぼ2倍になります。 男性も同じです。精子の数が平均で2割ほど減り、パートナーの受動喫煙にもつながります。 加熱式たばこ・電子たばこも「安全」とはいえません。妊娠を考えたら、ふたりで禁煙を。

4.お酒は、妊娠したら飲まない。妊活中から控えめに

妊娠中の飲酒に「これくらいなら大丈夫」という量はありません。赤ちゃんの発達に影響する「胎児性アルコール・スペクトラム障害」を防ぐ確実な方法は、飲まないことです。 妊活中も、飲酒する女性は妊娠しやすさが1割ほど下がるという研究があります。 ただし、「妊娠に気づく前に少し飲んでしまった」ことを、過度に心配しなくて大丈夫です。気づいたその日からやめれば、十分です。

5.風しんの抗体を、ふたりで調べる

妊娠中に風しんにかかると、赤ちゃんの心臓・耳・目に障害が出ることがあります(先天性風しん症候群)。 予防はワクチン接種ですが、風しんワクチンは妊娠中には打てません。だから「妊娠前」に調べておく必要があります。 大阪市では、妊娠を希望する女性と、その配偶者・同居の方は、風しんの抗体検査を無料で受けられます。抗体が足りなければワクチンを接種し、接種後2か月は避妊してください。 【当院は大阪市の風しん抗体検査取扱医療機関です/当院での取扱い要確認】

■ あわせて確認しておきたい3つのこと

持病とお薬 高血圧、糖尿病、甲状腺の病気、てんかん、心の病気などで治療中の方は、「薬をやめる」のではなく「妊娠に備えて薬を調整する」ことが大切です。自己判断で中止すると、かえって危険なことがあります。妊娠を考え始めたら、主治医か当院にご相談ください。

性感染症 若い世代で梅毒が急増しています。大阪府では、2024年に妊娠中の梅毒が57人、赤ちゃんへの感染(先天梅毒)が9人と、過去最多でした。クラミジアは自覚症状がほとんどなく、放置すると卵管がつまって妊娠しにくくなります。どちらも、妊娠前に見つかれば治せる病気です。 大阪市の保健所では、HIV・梅毒・クラミジアの検査を無料・匿名で受けられます。

年齢と、ライフプラン 女性の妊娠しやすさは、30代半ばから下がり始め、流産の割合は35〜39歳で約2割、40歳以上では約4割になります。男性も35歳を過ぎると、精子の質が少しずつ下がります。 「いつ子どもを持ちたいか」を、ふたりで早めに話しておくこと。それも立派なプレコンセプションケアです。

■ 妊活前の生活習慣——確かなことだけ、7つ

インターネットには「妊活に良い」情報があふれていますが、根拠がはっきりしているものは多くありません。当院が自信をもってお勧めできることだけを挙げます。

  1. 野菜を1日350g。20代女性の平均は約210gと、目標の6割です。朝食を抜く人は20代女性の2割以上。まず朝食から。
  2. 甘い飲み物を、水やお茶に。砂糖入り飲料を毎日1本以上飲む人は、妊娠しやすさが2〜3割下がるという研究があります。
  3. コーヒーは1日2杯まで(カフェイン200mg未満)。それ以上は流産のリスクが上がります。
  4. 週150分、会話ができる程度の運動。早歩き30分を週5回。ただし、毎日へとへとになるまでの運動はかえって逆効果です。
  5. 「とりすぎ」に注意。レバーやサプリメントのビタミンA、昆布製品のヨウ素は、とりすぎると赤ちゃんに影響します。葉酸とビタミンDは足す、それ以外は普通の食事で十分です。
  6. 夜勤・睡眠不足が続く方は、働き方を相談。夜勤は流産と関連があるという研究があります。
  7. 歯科検診と、食べ物の注意。歯周病は早産と関連します。生肉(ユッケ・生ハム・馬刺し)、加熱していないナチュラルチーズ、スモークサーモンは、妊娠したら避けます。

反対に、「冷えとり」「体温を上げる食品」「高価なサプリメント」などは、効果が証明されていません。お金をかける前に、上の7つを。

■ 男性のみなさんへ

不妊の原因の約半分は、男性側にあります。妊娠は女性だけの問題ではありません。 男性のプレコンセプションケアは、次の4つです。

  • 禁煙。精子の数・動きが下がり、パートナーの流産リスクも上がります。
  • お酒はほどほどに、適正体重を。肥満は精子の数と関係します。
  • 風しんの抗体検査。妊娠中のパートナーにうつさないために。配偶者・同居の方は大阪市で無料です。
  • 精液検査。自分の状態を知ることが、ふたりの妊活の近道です。当院では男性コースに含まれています。

サウナの常用は精子に影響し、やめれば回復します。筋肉増強剤やテストステロン製剤は精子をつくる働きを止めるため、妊娠を望む間は使わないでください。

文責:朝倉寛之(生殖医療専門医)2026/09/27

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME